::Re:mem:ber:: i










アカデミーはいつまで経っても変わらない。

師の声。童が笑い合う教室や校庭の隅々。

此処を無事に出る事が出来れば、子供たちは下忍の資格を認められ、後の中忍、上忍、暗部、はたまた諦める者と

いう一つの世界が形成されるのだ。

子供の笑う声は嫌いではない。しかしこの中で忍に成ってゆく事を疑問に思う者は何人居るのだろうか。危険な任務

に立ち合えば死に直面する確率も高いし、仲間や家族をそんな事に巻き込みかねない。

ここで笑う子供は、いったいいつまで笑っている事が出来るのだろう。絶やしたくはない。

忍などにはならなくていいんだよ。木の葉の里をそういう国にするから。

先代の火影や忍たちは、皆そう願っていたに違いない。

しかしそれは叶えられてはいないし、叶う兆しも見えない。だからはこうして生きているのだし、このアカデミーに居

る子供たちも何れそうなる運命なのだ。


フェンスの上に膝を立てて座っていたは、先程からずっと探していた標的を見つけるとニシシと笑い乍ら校庭へと

消えて行った。










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今、授業を終えて職員室に戻らんとするその人は、恐らくこの厭な殺気が近付くのを真っ先に感じ取った人物だろう。

この神聖な教育の場で音も無くやってくる気配に一筋の汗が伝った。そのすぐ後だった。背後でガサリと音を立て、

自分の肩にトントンと何かが触れた。そして、



「イルカ先生よ、大志を抱け!!」

「………ぐ……ぐわぁ…!!」



あまりの恐怖と突然のでかい声に思わず悲鳴を上げてしまったイルカは、尻餅を付いた先に呆け口を開けて突っ立

つ人間にかぁぁと顔を赤くした。

いつもこの人はこうだ。登場が派手なくせ、驚いた人間に対して笑う訳でもなく「何で驚いてんの?」という顔をする。

しかしイルカもイルカでワンパターンな彼女の出現を見抜かなくてはならないので、文句が云える立場でもない。



「………上忍」

「いかにも、私は上忍だが、これを見てくれイルカ先生よ!」



未だ驚きから立ち直れないイルカに、先程その肩を突付いたものをぐいっと近付ける。それはの後ろポケットに挿

してあった筒状の冊子で、既にくしゃっと歪んでいる。



「これって………報告書じゃないか?」



何で自分に渡されるのかよく解らないまま文字に目を走らせると、そこにはこの一ヶ月間があたった任務が至極簡

単に綴られていた。


暗部認定試験受験。講師に因り合格印を頂戴致す。内容、以下省略!



「こ、これじゃあ報告書の意味が………って暗部!?」



皺皺になってしまっている紙をイルカが強く握り締めたせいで、更にぐしゃっと跡がつく。その反応にも「うん」とかよく

解らない返答をしたの前で、じっと報告書を見つめていたイルカは今までが嘘の様に勢いよく立ち上がり、の両

手を取り、ぐっと握った。



「凄いなぁ、よかったなぁ!?そうかぁ……お前そんなに強くなってたんだなぁ!!」



まるで自分の事の様に喜ぶイルカ。

一見すると接点が無い様に思える二人だが、中忍試験にいつまでも受からなかったイルカが無事中忍となれたその

時に、木の葉の里から受験した中で彼女も合格を果たした一人であったのだ。

あれからの付き合い。当時と比べると、何でこんなんなっちゃったかなぁ……と頭を悩ませているイルカだったが、こ

れが昔の、あの素直で優しかった彼女のままだという事もよく解っている。

頭のキレが良いところがあったから――

ひとしきり喜んだイルカは、腑に落ちない表情――これは常にそうなのだが――のの顔を覗きこむ。



「………イルカ先生、君は喜んでいる場合なのか!?それじゃあ あのアホ毛だらけの、中もアホ毛なカボス先生の

ところのイナホ君にも先越されてしまうぞ!!」

「……カカシ先生に…ナルトな」



追い討ちを掛ける様に云われたイルカは肩を落とす。イナホ君はなかなか筋が良い。なんてったって私のあの“雨宿

りの術”に興味をもったのだからな!と云い続けるに、更に小さくなってゆく。さっきまで喜んでいた自分がとても惨

めだ。そうして最終的にイルカは開き直るのだ。



「あー、どうせ俺は万年中忍だよ……。どうせお前やカカシ先生みたいにはなれないさ………」

「君が私やカボス先生みたいに?はっ、笑わせてくれるな!」



そう叫んだ上忍は、人が変わった様に笑い出したかと思うとイルカの胸倉を突然掴んだ。鋭い目で下から見上げ眉

を顰める。



「あなたはそのままでいい。」



その言葉に息を呑んだ。

は思い出している。アカデミーでの無邪気な子供の笑い声。たくさんの軽快な足音。途切れる事は無い。

「カカシ先生」 「イルカ先生」

がそれと同じ様に呼ばれる事はないだろう。

直接何かをあげる事が出来ないから、不器用なりにこうして生きるしかないんだ。

直接与える事は―――もう死んでしまったから。



……上忍」

「いかにも、私は上忍だ!しかし君は万年の中忍だ!それを………恥じてはいないのだろう?」

「恥じてなんかいないよ」

「それで………いいんだ」



力を緩めて放された手を、イルカはとても遠く感じた。暗部と云う言葉にとてつもない恐れを感じているのだ。

遠い。探っても何も見えない。

はそうしていつもの表情に戻ると、ニヘラと笑って片手を上げた。



「お別れだ、イルカ先生。君の顔を見なくて済むと思うとせいせいする!中忍、海野イルカよ!!」



『グッジョブ』この言葉を云わせてはいけない。絶対に云わせてはいけない。

しかしそれを測ったかの様に消えてしまった上忍は、砂埃だけを残してイルカの前から去て行った。

暗部へ行くのだ。誰が誰かも判らぬお面を被り、彼女はそのまま死にに行くのだ。

自分の無力さがあまりにも悔しくて、イルカは渡されっぱなしの報告書を握り潰した。






















私の大大大大好きなイルクァ先生ですばぃ!!初イルクァ(≧∀≦)!!
ナルトの中では一番好きです!
でも、この主人公さんに手掛けられたらこんな感じになっちゃうんですよ……。
頑張れ、先生!!

選択ドリームなのになんで続いちゃってんの?
って云うのはまぁ、区切りがないと進められない私の力不足なんですわ。えぇ。
まだまだ続くので、イルクァ先生好きは是非是非お付き合いくだせぇ!!



次読むよ。

ブラザを閉じてお戻り下さい。